皆さんブルースは聞きますか? またブルースにどんなイメージがあるでしょうか。
- 「ブルースってなんだか古臭そう」
- 「そもそもどんな音楽がブルースなの?」
- 「聴いてみたけど良さがわからなかった」
- 「誰から聴けばいいの?」
など様々なイメージがあるでしょう。
ブルースはロック、ジャズ、ソウル、ファンクなどのルーツになった音楽で、西洋クラシック派生以外のポピュラーミュージックすべてのルーツとも言えます。
姿形を変えながら、現在のR&Bやヒップホップにすら影響を与えていると言えます。
と言っても、そんな歴史を紐解くなんてことはここではせず、ギタリストとして僕がおすすめするブルースのアーティスト・名盤・曲を紹介します。
興味を持ったらぜひ聴いてみてください。
ブルースとは
冒頭で歴史のお勉強はしないと言いましたが、簡単に触れておきましょう。
ブルースとは19世紀後半、アメリカ南部のアフリカ系コミュニティで生まれた音楽です。
失恋や貧困、旅の孤独など、日常の喜怒哀楽をシンプルな歌詞とメロディに乗せて歌い上げ、ギターやハーモニカのしびれるフレーズ、しゃがれたボーカルと絡み合い、聴く者の魂に直接訴えかけます。
音楽的には、12小節3コード進行(I–IV–V)が基本形で、ブルー・ノートと呼ばれる音が生む独特の“渋さ”が最大の特徴です。
ブルーノートとは、元々は黒人が歌い上げる独特の音程のことで、西洋音楽にはなかった(不協和音とされた)ものです。
これが非常にギターと相性がいいのです。
ギターはスライドやチョーキングすることで、ピアノなどでは出すことのできない連続的な音程の変化を出せます。
それによりブルー・ノートを自由に表現することができるのです。
20世紀前半にはデルタ・ブルースからシカゴ・ブルースへと電化が進み、さらにロック、R&B、ジャズなど無数のジャンルへ影響を与えました。
ブルースを知ることは、現代ポピュラー音楽の“原点”を知ること。これから紹介する名盤は、その歴史とエモーションを体感できる格好の入口です。
おすすめアーティスト・アルバム・曲
前置きが長くなったので、ここからはおすすめのブルースアーティストをアルバムと曲と合わせて紹介します。
基本的には時代順で紹介します。
Muddy Waters(マディ・ウォーターズ)
一人目はシカゴブルースの親分マディ・ウォーターズです。
泥水を意味する名前通り、彼を聴けばの名前の通りブルースの「泥臭さ」は一発で伝わるでしょう。
ブルースを体現するその渋い歌声や豪快なギター、セッションでも定番のリフなど、ブルース入門にはまず聴いておいて間違いないです。
The Real Folk Blues
おすすめ曲:Manish Boy
代表曲を収めた名盤です。
Manish BoyはRolling Stonesを始め、様々なアーティストにもカバーされています。
エレクトリックブルースの始まりを感じてください。
Fathers and Sons
おすすめ曲:Long Distance Call,Got My Mojo Working
こちらは後期の名盤です。
マディ・ウォーターズを父と慕うアーティストが集って作成されたアルバムです。
後半のライブ収録のテンションはとんでもないです。
B.B.King(B.B.キング)
二人目はキング・オブ・ブルースことB.B.Kingです。
マディとは打って変わって、管楽器やテンションコードなどのジャズ要素ふんだんで洗練されたモダンブルースを聴かせてくれます。
B.B.Kingはまさにギターフレーズの宝庫。メジャーとマイナーをミックスしたフレーズは、現代のネオソウルなどの文脈においても生き続け、その影響力は絶大です。
Live at The Regal
おすすめ曲:Everyday I Have the Blues, Sweet Little Angel
全盛期キングの名ライブアルバムです。
パワフルな歌声と美しいアレンジ、そして全曲のギターソロが必聴です。
Completly Well
おすすめ曲:The Thrill Is Gone
美しくも悲しげなマイナーブルースの名曲スリルイズゴーンを含んだ名盤です。
イントロのフレーズは確実にコピーしましょう。
Otis Rush(オーティス・ラッシュ)
シカゴブルースを代表するギタリストオーティス・ラッシュ。
ロック好きにも馴染みやすい痺れるギターソロを披露してくれます。
Eric Clapton、Stevie Ray Vaughanなどにも影響を与えていることからも分かるでしょう。
Tops (Recorded Live at the San Francisco Blues Festival)
おすすめ曲:Right place wrong time, I Wonder Why
BBからも影響を受けた絞り込むようなチョーキングや、単音リフを中心とした曲などがめちゃくちゃにかっこいいです。
ロックに接近したブルースを聞きたければおすすめです。
Eric Clapton(エリック・クラプトン)
三大ギタリストとも呼ばれる、生きる伝説的なギタリスト。
クラプトンもそのルーツはブルースです。
特に60年代クラプトンのブルースとサイケデリックをミックスさせた音楽は今聞いてもかっこいです。
Blues Breakers with Eric Clapton
おすすめ曲:Hideaway
当時アイドル的な人気を嫌い、ブルース・バンドに身を投じたクラプトンとジョン・メイオールによる名盤です。
Hideawayはギタリスト必聴ですし、コピーしましょう。
先ほど紹介したOtis Rushのカバーも収録されています。
Fresh Cream
おすすめ曲:I’m So Glad, Spoonfull
エリック・クラプトン、ジンジャー・ベイカー、ジャック・ブルースによる伝説的なバンドです。
少々純粋なブルースとは違いますが、ブルースを根底にした即興性やサウンドは必聴です。
Spoonfullはブルースナンバーのカバーです。
この3人でしか成り立たない緊張感、時代を反映したサイケデリックさ、クラプトンのギターのトーンなど聞きどころはたくさんあります。
Jimi Hendrix(ジミ・ヘンドリックス)
もはや全く説明は不要の偉大なギタリスト。
サイケデリックな音楽性や、派手なパフォーマンスが語られますが、根底にはブルースがあります。
マディ・ウォーターズへの敬意や、バディ・ガイからの影響の公言、アルバート・キングの曲のカバーからもそれがよく伺えます。
そのルーツに、彼ならではのサウンドメイクやパフォーマンス、SUS2や#9thを駆使したフレージングが加わり、あの前人未到な領域にたどり着いたのでしょう。
Are You Experienced?
おすすめ曲:Red House
デビューアルバムにしてベストアルバムのようなラインナップの大名盤です。
ブルース文脈で語るとしたらジミ流のスローブルースナンバーRed Houseですね。
イントロの不穏なセブンスフレーズ、緩急をきかせながらメジャーとマイナーを行き来するギターソロは必聴です。
歌の後ろのバッキングも全てかっこいいです。
Mike Bloomfield(マイク・ブルームフィールド)
クラプトンに続いてのホワイトブルースマン、マイク・ブルームフィールドです。
ブルースは黒人だけの音楽と侮るなかれ、初期クラプトンとマイク・ブルームフィールドには本家顔負けのブルースフィールを感じられます。
Super Session
おすすめ曲:Albert’s Shuffle
当時の売れっ子たちが集まって録音したセッション音源です。
あまりの完成度にその後セッション音源ブームがおきたとかなんとか。
1曲目のはち切れそうなテンションは凄まじいですし、2曲めも始まった瞬間に耳をつんざくギターの音に虜になります。
当時心身に不調をきたしていたマイクは5曲にしか参加していませんが、5曲ともすべて必聴です。
Stevie Ray Vaughan(スティーヴィー・レイ・ヴォーン)
3人目のホワイトブルースマンはブルースを復活させた男、SRVことスティーヴィー・レイ・ヴォーンです。
テキサススタイルの佇まいに、極太の弦から出る極上のトーン、ブルースの基本を抑えながらもアグレッシブで大胆なフレージング、クリーントーンで鳴らす美しいサウンドなど、枚挙にいとまがない偉大なギタリストです。
現代においても、ジョン・メイヤーが腕に入れ墨を入れるほどの影響を公言しています。
Texas Flood
おすすめ曲:Pride and Joy, Texas Flood, Lenny
MTV全盛期の時代に「ギターってかっこいいんだ」ともう一度世間に知らしめた名盤です。
2曲目Pride and Joyではブルースの基本をおさえながらも、それでいて新しいブルースを表現しています。
イントロからバッキング、ターンアラウンド、ソロすべてがコピーマストです。
TexasFloodでは濃密なスローブルースを聴かせてくれます。
この太く荒々しいサウンドを聞かせる一方で、Lennyではとろけるような美しいクリーントーンを聞かせてくれます。
Marquise Knox
最後はグッと現代に近づいて一人だけ紹介します。
どうしても現代の若いブルースギタリストでピンとこなかったのですが、たまたま聴いた彼のライブ盤にはやられました。
BLACK AND BLUE
おすすめ曲:Bluesman、Can a young man play the blues
マディ・ウォーターズやB.B.キングを彷彿とさせる曲やフレージングを披露しつつ、現代のサウンドにアップデートされており、こういうブルースが出てほしかったと思わされました。
BluesmanやCan a young man play the bluesという曲名には、彼の決意を感じるようです。
こうやってブルースは受け継がれていくのですね。
まとめ
ブルースは聴けば聴くほど「感情をギターに乗せるとはこういうことかと」と感じられます。
ブルースギタリストにとってギターは歌うことと同じなのでしょう。
僕もいつかは自分のギターに感情を乗せて「歌わせてみたい」と強く感じます。
過去の偉大なブルースマンたちの足跡を追い、真似して、自分なりのブルースを見つけようと思います、
皆さんも是非ブルースに触れてみてください!